『受託開発はやめとけ』『受託開発はつらい』という声をよく聞きますが、本当にそうでしょうか?」
現役エンジニアの僕が、実務経験を通して、受託開発には自社開発にない大きなメリットがある と感じました。
もちろん目指すポジションにもよりますが...重要なのは「仕様設計や実現可能性の調査をしたり、クライアントの課題に対してエンジニア視点で提案をしたり、ヒアリングやテクニカル部分のリードができる 」ような環境があるかどうか、とも思っています。
この記事では、実際に複数の受託開発企業で働いた経験をもとに、以下について実体験を交えてお伝えします。
- 受託開発だから得られる4つのメリット
- 自社開発 vs 受託開発|どっちが良いのか
- 受託開発企業の見分け方
5分ほどで読めますので、最後までお付き合いください。
WRITER
現役エンジニア|つかさ
Frontend Engineer / SEO Writer / Web Media Manager
現在20代後半、エンジニア歴5年で転職3回+フリーランス1回を経験。最初はマークアップ作業から始まり、今ではフロントエンド開発やインタラクション実装まで幅広く担当。
AID-TRUTHは、バックエンドエンジニアやディレクター、人事で活躍する人など、現役で活躍する人たちが実体験を活かしてコンテンツ発信をしています。
INDEX
正直、僕は特別な経歴も無いし、強い実績を持ったエンジニアではありません。
・転職で失敗したこともあるし
・技術の習得に苦労したこともあるし
・年収交渉でうまくいかなかったこともある
・もっと成長したくてフリーランスから正社員に戻ったこともある
読者と同じような立場で悩み、選択してきた経験を共有することで、少しでも良い判断材料になればと考えています。華々しい成功談ではなく、等身大のエンジニアの歩みを記録する場所として運営中。
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受託開発の4つのメリット|5年の実体験で思ったこと
僕が実際に受託開発で働いて感じた、自社開発にはない独自のメリットを4つご紹介します。これらは一般論ではなく、実際の業務を通じて体験した具体的な価値です。
メリット1:いろんな種類の技術に触れる機会がある
受託開発の最大のメリットは、クライアントや案件によって環境が変わるから技術の振り幅が伸びることです。
実際に僕や、一緒に働いたことのある友人が経験した技術範囲をご紹介します。
- 静的サイト制作 → React/Vue.js SPA開発
- WordPress → ヘッドレスCMS改修(Newt、MicroCMS など)
- 従来型Web → PWA・モバイルアプリ開発
- オンプレミスアプリ → Webアプリに移行
- ECサイト構築(EC-CUBE組み込み)
のように、上記は一例ですが、受託開発だとより幅広い技術スタックに触れ合う機会が多いなという所感はあります。
JavaScriptフレームワークひとつとっても、案件によっては、Reactで環境構築する機会もあれば、既存のVue.js環境で改修パターンもあったり、状態管理だって同様に案件によって設計が異なるので、より多くの技術に触れ合うことができます。
もちろん、受託する案件によっては大規模な案件に2,3年アサインすると言ったパターンであれば別ですが、コンスタントに複数の案件を担当する受託形態であれば、自然と幅広い技術に出会うことができます。
メリット2:様々な開発パターンを短期間で経験できる
こちらもメリット1と似ていますが、技術に限らず様々なパターンの案件を比較的に短期間で経験できます。
例えば、フロント設計を0ベースで考える必要があって、環境構築からガッツリ関わる案件があったり。すでにバックエンドエンジニアが整えた VB.NET 環境に、フロント側としてReact環境を導入する流れでを体験したことがあります。
一方他の案件では、ECサイト開発に携わる中でEC-CUBEというECサイト構築サービスで、提供されたAPIで接続する業務もありました。EC-CUBEの管理画面側で設定された在庫状況をフロント側で表示する設計を考えたり、これまた別角度の経験。
C案件では、インタラクション設計をUIデザイナーが本格的にやっていて、Figmaのコンポーネントとどんな風に連携すべきか分かりました。
これも企業に寄りけりかもしれませんが、上記のような案件パターンを3ヶ月 〜 半年のスパンで入れ替わりで経験できるのは、受託ならではのメリットじゃないかなと思います。
メリット3:クライアントと直接やり取りする中で提案力が身につく
受託開発では様々な案件に関わる中で、直接クライアントと関わる機会が多く、その中で多角的な提案力が身につきます。もちろんそれ相応のディレクション能力が備わったらですが。
ちょっとこれは自分の話じゃないんですが、ECサイト開発では、先輩のテックリードの方が、バックエンドエンジニアとの連携や在庫管理システム設計の提案などをしていました。
単純にフロントエンドの実装をするだけでなく、「在庫切れ表示のタイミングをどうするか」「決済システムとの連携でエラーハンドリングをどう設計するか」といった、ビジネスロジックに踏み込んだ提案をクライアントへ行う機会が、その案件にはあったんです。
もちろん、自社開発でも提案機会はあると思います。
しかし受託開発では、案件ごとに異なる業界・規模・課題を持つクライアントに対して、どうアプローチすべきかを考える経験 を積むことができます。
この「相手に応じて提案内容を変える力」は、受託開発ならではのメリットだと感じています。
メリット4:案件毎に参画メンバーが変わって、より柔軟なコミュニケーション力が身につく
受託開発では、クライアント側の担当者、プロジェクトマネージャー、デザイナー、バックエンドエンジニアなど、異なる立場・視点を持つ多くの人たちと協働する機会があります。
案件ごとに参画メンバーが変わる事が多いため、様々な人とのコミュニケーション力が身につくと思います。
例えば、ECサイト開発の案件では:
- クライアント側の事業責任者 :ビジネス目標と売上への影響を重視
- マーケティング担当者 :ユーザー体験とコンバージョン率を重視
- バックエンドエンジニア :システムパフォーマンスとデータ整合性を重視
- UIデザイナー :デザイン一貫性とユーザビリティを重視
それぞれ異なる優先順位と専門性を持つ人たちと、いかに意識を揃えて進めるかが重要 になります。
短期間での信頼関係構築スキル
自社開発では同じメンバーと長期間働くことが多いですが、受託開発では案件ごとに新しいチームが組まれます。
短期間で新しいメンバーと信頼関係を築き、効率的に協業する必要があるため、自然とコミュニケーション力が鍛えられます。
同じエンジニアとの協業体験
フロントエンドエンジニア同士でも、コーディングスタイルや考え方が大きく異なります。
A案件のメンバーは Scss で組むケース、B案件のメンバーはCSS in JSを使うケース、それぞれ異なるアプローチを学べました。
相手の作業スタイルを素早く理解し、「なぜそのアプローチを選んでいるのか」を聞いて、自分のやり方と比較検討する習慣が身につきました。
デザインのパターン違い
デザインのやり方も案件によってかなり異なるため、コーディングする側の作業スタンスも変わってきます。
- デザイナー側でインタラクションのモックが作られる :Figmaのコンポーネントを読み取って忠実に再現
- エンジニア側に演出案が求められる :参考サイトが提供されてコミュニケーションを取りながら実装
- UX思考が強い案件 :クリエイティブを統括する人が居て、様々な人と会話しながら実装案を提案
デザインを取っても、それぞれの特徴に合わせた適切な距離感でコミュニケーションを取る力が身につくはずです。
上記でまとめてきた、受託開発で身につく「多様な人との協業力」は、転職時にも「どんなチームでも馴染める人材」として高く評価されることが多いです。
自社開発 vs 受託開発|結局どっちが良いのか
結論、自分がどんな成長をしたくて、どんな環境が最適か、で考えたらいいとは思います。
「1つのシステムやアプリを長期的に成長させるプロジェクトに携わりたいから自社開発にしよう」「まずは多くの技術やクライアントの課題に触れて、色んな開発パターンに触れ合いたいから受託開発にしよう」などなど...自分の将来像や目標で決めていけば良いと思います。
以降は、僕が実務経験2年くらいの時に勘違いしていた事と、転職エージェントでキャリアアドバイザーに教えてもらった事をまとめていきます。
「受託開発 = 成長できない」は企業選択の問題
多くの人が受託開発に対してネガティブなイメージを持つのは、「受託開発」そのものの問題ではなく、企業のビジネスモデルやスタンス、働き方の問題 だと実感しています。
ネガティブイメージの原因
- 多重下請け構造による情報・裁量の制限
- 一括請負契約による硬直的な開発プロセス
- エンジニアを「作業者」として扱う企業文化
- 顧客との直接対話機会の欠如
これらは確かに成長を邪魔すると思いますが、すべての受託開発企業に当てはまるわけではありません 。
顧客と対等な受託開発なら自社開発と差はない
自社開発での企画参加
自社だと企画から業務に関わることができるのがいいですね。
例えば、長年運用していた求人検索システムを改修するために、どんな運用方法がベストかとか、エンジニア視点での新規コンテンツがないか一緒に考える機会があります。
受託開発での主体的関与
受託だと確かに、企画から関わる機会は少ないと思われがちです。でも実際は、立ち位置や契約形態によって大きく変わる と思います。
例えば、技術選定機会もあるなら問題ない
例えば、あるメディアサイトの改修案件で、クライアントは「WordPressでデザイン刷新をしたい」を依頼されました。
ただ作業担当者として引き受けるなら、言われた通り新しいデザインをWordPressで実装すれば良いと思います。
でも、当時のテックリードの先輩は、「本当にその方法が最適なのか」 を考えてくれました。
- 今後、Web以外の別の媒体でもコンテンツ発信をするかもしれない
- コンテンツ管理システムとコンテンツ表示は切り分けた方がいいのではないか
こんな風に「ヘッドレスCMS」への移行を提案されていました。
上記のように、顧客と対等なパートナーとして、当事者の一員として主導権を持って提案・開発できる受託案件では、技術を出し惜しみする必要がありません。
顧客のビジネスに貢献できるような受託案件なら、冒頭で伝えたネガティブイメージはもはや感じないと思います。
まとめ
重要なのは「仕様設計や実現可能性の調査をしたり、クライアントの課題に対してエンジニア視点で提案をしたり、ヒアリングやテクニカル部分のリードができる 」ような環境かどうかだと思いました。
それこそ、会社に営業やプロジェクトマネージャー、マーケター、デザイナーがいて、その人たちが案件を受注して社内エンジニアと作戦会議して、仕様設計を決める流れとか。
そういう環境なら、受託開発でメリットを存分に実感できるんじゃないか、と思います。
もちろん、技術力特化で勝負してもいいと思いますが、悩みを解決してくれるエンジニアの方がビジネス的により一層役に立てられそうと、個人的には思います。
また、「受託開発はやめとけ」と言われる一般的な理由と実体験をまとめた記事は下記も参考に。
受託開発企業の見分け方【転職失敗を避ける実践ガイド】
では、実際にどうやって「成長できる受託開発企業」を見分ければいいのでしょうか?
僕がこれまで転職エージェントのキャリアアドバイザーからアドバイスを貰った経験をもとに、具体的な判断基準をお伝えします。
優良企業の3つの判断基準
僕が実際に使った判断基準は以下の3つです:
- 仕様設計・調査など、企画・設計段階から関与できる案件があるか
- クライアントの課題を解決できる機会があるか
- 2,3次請けなど極端な下請け案件ばかりではないか
① 仕様設計・調査など、企画・設計段階から関与できる案件があるか
仕様設計から携わる案件があるかどうかは大切な判断軸だと思います。環境構築や技術選定、実現可能性の調査まで携わることができると、提案能力も伸びるし、多角的な知見も溜まります。
転職エージェントでの求人選択とかで「設計段階から関わることのできる案件が多いか」など具体的に確認できると良いと思います。
② クライアントの課題を解決できる機会があるか
単なる「システム開発の下請け」ではなく、クライアントの課題解決に関われる環境があると良いと思います。僕がディレクターとして営業と一緒にクライアントヒアリングに参加した経験では、マーケティング改善の課題をLP実装で解決するという流れで、技術力だけでなくビジネス視点も身につきました。
こうした機会がある企業は、長期的にエンジニアとして価値を高められる環境だと思います。
③ 2,3次請けなど極端な下請け案件ばかりではないか
僕は実務経験0〜2年の頃に2次受け中心の企業にいましたが、やはり元請けや1次請け企業が仕様設計したものを請け負うイメージで、全体を見渡す機会が限られていました。
下請けが悪いわけではありませんが、元請けに近いほど責任ある立場で案件に関われますし、昇給の面でも有利になります。企業のWebサイトで実績として公表されている案件があるかどうかも、一つの判断材料になります。
企業研究で見るべきポイント
面接前の企業研究では、以下のポイントを重点的に調べました:
公式サイトでの確認事項:
- 制作実績の豊富さと質
- 技術ブログやオウンドメディアの充実度
- 採用ページでの技術スタック・開発環境の説明
SNS・外部メディアでの確認事項:
- 社員の技術発信活動
- 勉強会・カンファレンスでの登壇実績
- 業界メディアでの取材・掲載状況
サイト等での確認事項:
- Note等で発信されている社員のリアルな声
- 労働環境・成長機会に関する声
- 自社の良いと思っている事など
ただし、口コミサイトの情報は参考程度に留めて、最終的な判断は面接での直接確認を重視することが大切です。
特に昇給については、「昇給制度はあるが、実際の昇給額は良くて年収ベースで1万円程度」というケースもあるので、企業の先輩エンジニアの具体的な実績を聞けると良いと思います。
より自分に合った受託開発企業を探すなら転職エージェント
もし、今の環境で悩んでいて転職をちょっとでも検討していたら、転職エージェントやスカウト型の転職サービスを使って、色んな企業を見てみるのも良いと思います。
転職サービスを使い出したら必ず転職しないといけない訳じゃありません。僕の場合は、転職エージェントに登録してみて、キャリアアドバイザーの今の悩みを打ち明けて、「転職すべきかどうか」から相談に乗ってもらった経験があります。
そこで知らなかった様々な受託開発企業を知れたし、やっぱりまずは行動してみるのがいいなと実感できました。
おすすめのエンジニア特化型の転職エージェント
下記みたいなエンジニア特化型の転職エージェントだと技術的な話が通じやすく、企業の技術スタックや開発体制についても詳しく教えてもらえました。



転職エージェント活用のコツ
- 複数のエージェントを併用する
- 最初は「情報収集」のスタンスで気軽に相談
- 実際の求人や企業の詳細について初回面談で教えてもらう
まとめ:受託開発を積極的に選ぶべき理由
受託開発の4つのメリット再確認
- いろんな種類の技術に触れる機会がある
- 様々な開発パターンを短期間で経験できる
- クライアントと直接やり取りする中で提案力が身につく
- 案件毎に参画メンバーが変わって、より柔軟なコミュニケーション力が身につく
重要なのは「仕様設計や実現可能性の調査をしたり、クライアントの課題に対してエンジニア視点で提案をしたり、ヒアリングやテクニカル部分のリードができる 」ような環境かどうかだと思いました。
もし、受託開発に関する他の記事や、実務経験2,3年目の市場価値等を知りたい場合は、下記もご参考にしてみてください。