「受託開発はやめとけ」という声をよく聞きますが、本当にそうでしょうか?
受託開発企業で働いている時、もしくは転職先に受託開発を検討している時、「受託開発でキャリアを積んで大丈夫なのか?」「多重下請け構造とか、技術的な制約に悩まされないか...」と不安に感じる人もいるはず。僕も全く同じ悩みを抱えていました。
実際、僕が24歳・実務経験2年の時の心境はこうでした:
「毎日の業務はHTMLの修正や既存サイトの更新ばかり。同期は最新のフレームワークを使った開発をしているのに、僕はレガシーな技術環境で作業担当者のような立場。『このままで本当にエンジニアとして成長できるのか?』『受託開発という業界自体がオワコンになったらどうしよう…』と、将来への不安が日に日に大きくなっていました。
この記事では、これまで複数の受託開発企業で働いた中で思った下記のような内容をお伝えします。
- 「受託開発やめとけ」の真実を実体験で検証
- 24歳・実務2年で実際につらいと感じた受託開発リアル
- 受託開発のメリットと自社開発との比較
- ベストな受託開発企業の見分け方と転職失敗回避法
読み終える頃には、今の不安が少しでも減って、今後の具体的な行動が明確になると思います。
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現役エンジニア|つかさ
Frontend Engineer / SEO Writer / Web Media Manager
現在20代後半、エンジニア歴5年で転職3回+フリーランス1回を経験。最初はマークアップ作業から始まり、今ではフロントエンド開発やインタラクション実装まで幅広く担当。
AID-TRUTHは、バックエンドエンジニアやディレクター、人事で活躍する人など、現役で活躍する人たちが実体験を活かしてコンテンツ発信をしています。
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正直、僕は特別な経歴も無いし、強い実績を持ったエンジニアではありません。
・転職で失敗したこともあるし
・技術の習得に苦労したこともあるし
・年収交渉でうまくいかなかったこともある
・もっと成長したくてフリーランスから正社員に戻ったこともある
読者と同じような立場で悩み、選択してきた経験を共有することで、少しでも良い判断材料になればと考えています。華々しい成功談ではなく、等身大のエンジニアの歩みを記録する場所として運営中。
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「受託開発やめとけ」と言われる6つの理由【実体験で検証】
受託開発について調べていると、「やめとけ」とか「自社開発と比べて〇〇」といった声もよく見かけると思いますが、僕の実体験から言うと、これらの理由の多くは「どんな受託開発企業で、どんなポジションで働くか」によって大きく変わると思います。
というか結局、自分の能力と実績次第だろう...と思っちゃいます。
よく言われる「やめとけ理由」6つの整理
受託開発がやめとけと言われる理由として、多くのサイトで以下の6つが挙げられています:
- 市場縮小の懸念 :自社開発への移行増加、ノーコード開発の普及、オフショア開発の拡大
- 労働環境の問題 :絶対的な納期プレッシャー、長時間労働・残業の常態化、クライアントに振り回される状況
- 多重下請け構造 :2次・3次・4次請けの問題、下層ほど低報酬・限定業務、情報伝達の粗さ・報連相問題
- 客先常駐の課題 :自社ルールが適用されない、コミュニケーション困難、転勤リスク
- 技術的制約 :古い技術・レガシーシステム中心、最新技術への触れる機会少、ウォーターフォール開発が主流
- 提案機会の制限 :顧客要望に従うだけの作業、企画・設計への関与制限
確かに、これらの問題は存在します。でも重要なのは「受託開発だから必ずこうなる」わけではないということです。
僕が実際に体験した「やめとけ理由」の現実
僕も実際に受託開発企業で働いた経験があります。24歳くらいの当時の状況をリアルにお話しします。
多重下請け構造、技術的制約、そして何より市場縮小の危機感 、これらは確実に経験しました。2,3次請けくらいの下請けだと、受注金額が少なくて、よほど優秀じゃないと高い年収レンジは目指せませんでした。
それに、元請けの方で仕様設計が決まるケースがあれば、技術の制約は多かったですね。ejsとか、フレームワークなしのJavaScript環境とか…。古い技術・レガシー中心という話は、まさにあるあるでした。
特に強く感じたのは市場縮小への危機感 です。「今自分がやってる単純作業って、もっと上位層のエンジニアだったらAIとかで自動化できるんじゃないか...」という不安は常にありました。
でも転職活動を通じて気づいたのは、受託開発企業でも「どんな能力や実績があるか」「どんなポジションで働くか」によって、これらの問題の多くは解決できるということでした。
重要なのは「提案型エンジニア」になれる環境かどうか
実際に様々な受託開発企業を経験して分かったのは、元請けでも下請けでも関係なく、重要なのは「仕様設計や実現可能性の調査をしたり、クライアントの課題に対してエンジニア視点で提案をしたり、ヒアリングやテクニカル部分のリードができる 」ような環境かどうかだと思いました。
僕もまだまだ、こんな優秀なエンジニアじゃないですよ!、でも転職活動中の面接とか、転職後の企業で働く中でも、上記のような動きは実際に求められました。だから、その方が力になれると思うんです。
それこそ、会社に営業やプロジェクトマネージャー、マーケター、デザイナーがいて、その人たちが案件を受注して社内エンジニアと作戦会議して、仕様設計を決める流れとか。
そういう環境なら、先ほどの「やめとけ理由」の多くが解決されます。元請けだから完璧というわけではありませんが、提案型エンジニアとして成長できる可能性は格段に高くなります。
※「提案型エンジニア」ってのは この記事 を参考にした言葉です。
24歳・実務2年での受託開発リアル【年収230万円の当時のつらさ】
では、24歳当時の僕の具体的な業務内容もまとめていきます。今のあなたと似たような状況だったら、きっと共感してもらえると思います。
1週間の業務実態を公開【運用保守2/3・新規開発1/3】
当時の僕の1週間の業務実態を正直にお話しすると、2/3くらいは運用保守、簡単な更新作業、または簡単なWebページ実装でした。残りの1/3くらいが、スポットのLP制作・改修業務といった感じです。
運用保守業務の具体的内容:
- 既存サイトのテキスト修正
- 画像差し替え作業
- お問い合わせフォームの項目追加
- WordPressテーマの微調整
新規開発の実態:
- 小規模LP制作(HTML/CSS + JavaScript)
- ejs テンプレートエンジンを使った静的サイト
- PHPでの簡単な問い合わせフォーム実装
技術レベルとしては、HTML/CSS、JavaScript、ejs、PHPといったところで、最新のフレームワークには触れる機会がほとんどありませんでした。
React?Vue.js?聞いたことはあるけど、実際に案件で使うことはない…そんな状況でした。
同期との年収格差で感じた劣等感【具体的数字で公開】
当時の年収格差は本当に辛かったです。具体的な数字をお見せします:
- 僕の年収:230万円(月収約19万円、ボーナスなし)
- 同期A(自社開発):340万円(月収23万円、ボーナス年2回)
- 同期B(SIer):380万円(月収25万円、ボーナス年2回)
同じ「エンジニア」という肩書きなのに、年収差は110万円から150万円。これって、月給で言うと8万円から12万円の差なんです。
技術的な会話についていけない焦りも強かったです。友人たちがReactのHooksやNext.jsのSSRの話をしている時、僕は「HTMLの修正でclassとid、どっちを使うべきか」みたいなレベルの悩みを抱えていました。
同じ年数エンジニアをやっているのに、こんなに差があるのか…と劣等感を強く感じていました。
多重下請け構造の下層の案件のつらさ
元請け企業が受注した業務を、さらに下請け企業に委託し、その下請け企業がさらに別の下請け企業に委託するというように、業務が多段階にわたって再委託される構造のことで、どうしても下層だと受注金額が低くなってしまう問題はあります。
当時、友人のSIerエンジニアの話を聞きながら感じたこととしては、下記のような違いはあると思います。
下請け
- 受注金額が元請と比べると低い場合が多い
- クライアントの要望が見えづらく作業感がある
- 制作仕様が既に決まっているパターンが多い
元請け
- クライアントと直接やり取りしながら提案に参画
- 調査や設計をする機会が多い
- 案件に最適な技術選定をする機会がある
下請けが全て悪い訳じゃないと思いますが、元請け案件のような働きができる機会が多い方が成長につながりやすいとは感じました。
「作業担当者でいいのか」という不安の正体
また、先ほど伝えた下層の下請け案件だと、元請けの方で仕様が決まっていたり、既存サイトの更新・改修だと、仕様設計に携わる機会が少なくて、エンジニアとして考えながら設計・提案する機会がなかったんです。
そんな時は「作業担当者でいいのか…」と悩んでいました。
でも、たまに仕様設計から携わる案件があると、環境構築や技術選定をしたり、実現可能か調査したり、考えて提案する機会が多くて充実した感情だったんです。
この違いを体験して気づいたのは、「受託開発が悪い」わけではなく、「どんなポジションで関わるか」が重要だということでした。
転職を決意した3つの理由
結局、転職を決意した理由は以下の3つでした:
- 仕様設計に携わりたかった : 作業担当者ではなく、企画・設計段階から関与したい
- 実務経験が積めそうになかった : 機械的な単純作業が多く、成長実感がない
- 年収が低い、昇給できない : 昇給制度はあったものの、年収ベースで1万円くらいの上昇幅
ただ、当時の受託開発企業が悪い訳でもなく、自分の実績や能力に見合った任せられる仕事を与えてくれていたと今は思います。でも、本当に企業の労働環境に問題がある人の話も、今までたくさん聴いてきました。
もし、「実務経験が積めない」と悩んでいる人がいたら、下記の記事も参考になるかもです。
受託開発にもメリットがある【自社開発との公平な比較】
まずは自社開発から。フリーランスで一度だけ自社開発も経験したから分かるけど、自社だとシステムやアプリの企画段階から関わる機会が多いのがいいと思います。
例えば、長年運用していた求人検索システムを改修するために、どんな運用方法がベストかとか、エンジニア視点での新規コンテンツがないか一緒に考える機会があります。
でも受託開発だと、自社レベルに企画から関わる機会は少ないと思います。でもこれって自分のポジションや案件によると思うんです。
メディアサイトを改修する依頼を受けて、今までWordPressだったけどヘッドレスCMSの方がいいじゃないか?とか、別に企画・設計から提案に携わる機会もあります。
あと、自社は、環境の変化が少ないのも良い点だと思います。でも逆に受託開発なら、クライアントや案件によって環境が変わるから技術の振り幅が伸びると思います。こういうメリットもあります。
自社開発vs受託開発の公平な比較
実際に両方を経験した立場から、メリット・デメリットを整理してみます。
自社開発のメリット:
- 企画段階から運用までチーム一丸となってプロダクトを築いていける
- 特定の技術を集中して伸ばすことができる
- 環境の変化が少ない安定感
受託開発のメリット:
- いろんな種類の技術に触れる機会がある
- 様々な開発パターンを短期間で経験できる
- クライアントと直接やり取りする中で提案力が身につく
- 案件毎に参画メンバーが変わって、より柔軟なコミュニケーション力が身につく
上記のメリットの詳細は、下記の記事もご参考にください。
結局、環境や企業の責任にせず、どんな成長をしたいかで考えるべき
結局は、自分はどんな環境が合っていて、どんな成長をしたいかで考えたらいいと思います。
「1つのシステムやアプリを長期的に成長させるプロジェクトに携わりたいなら自社が良い」「多くの技術やクライアントの課題に触れて、幅広い視点で課題解決できるようになりたい」などなど...自分の将来像や目標で決めていけば良いと思います。
もし、下記みたいな悩みがあったら、
- 自分のキャリアプランがなかなか見えない...
- 自社開発企業や受託開発企業の実際の求人を見たい
- キャリアアドバイザーに相談しながら転職先を決めたい
エンジニア特化型の転職エージェントで、キャリアアドバイザーに相談してみるのも良いかもです!
筆者が実際に使ったエンジニア特化型の転職エージェント

受託開発企業の見分け方【転職失敗を避ける実践ガイド】
では、実際にどうやって「成長できる受託開発企業」を見分ければいいのでしょうか?
僕がこれまで転職エージェントのキャリアアドバイザーからアドバイスを貰った経験をもとに、具体的な判断基準をお伝えします。
優良企業の3つの判断基準
僕が実際に使った判断基準は以下の3つです:
- 仕様設計・調査など、企画・設計段階から関与できる案件があるか
- クライアントの課題を解決できる機会があるか
- 2,3次請けなど極端な下請け案件ばかりではないか
① 仕様設計・調査など、企画・設計段階から関与できる案件があるか
仕様設計から携わる案件があるかどうかは大切な判断軸だと思います。環境構築や技術選定、実現可能性の調査まで携わることができると、提案能力も伸びるし、多角的な知見も溜まります。
転職エージェントでの求人選択とかで「設計段階から関わることのできる案件が多いか」など具体的に確認できると良いと思います。
② クライアントの課題を解決できる機会があるか
単なる「システム開発の下請け」ではなく、クライアントの課題解決に関われる環境があると良いと思います。僕がディレクターとして営業と一緒にクライアントヒアリングに参加した経験では、マーケティング改善の課題をLP実装で解決するという流れで、技術力だけでなくビジネス視点も身につきました。
こうした機会がある企業は、長期的にエンジニアとして価値を高められる環境だと思います。
③ 2,3次請けなど極端な下請け案件ばかりではないか
僕は実務経験0〜2年の頃に2次受け中心の企業にいましたが、やはり元請けや1次請け企業が仕様設計したものを請け負うイメージで、全体を見渡す機会が限られていました。
下請けが悪いわけではありませんが、元請けに近いほど責任ある立場で案件に関われますし、昇給の面でも有利になります。企業のWebサイトで実績として公表されている案件があるかどうかも、一つの判断材料になります。
面接で確認できると良い具体的質問
実際の面接では、転職エージェントでキャリアアドバイザーに相談してもらいながら、以下のような質問で企業の実態を確認しました:
技術・業務内容について:
- 「実際の開発業務で、環境構築や設計から関わる機会はありますか?」
- 「〇〇の案件だと、どのように技術選定をしましたか?」
- 「最近のプロジェクトでどんな技術スタックを使っていますか?」
成長・キャリアについて:
- 「入社してから、どんな案件に携わることができますか?」
- 「先輩エンジニアの方は、どんなキャリアを歩んでいますか?」
- 「技術的な勉強会や外部発信の機会はありますか?」
- 「昇給はどんな判断で決まりますか?
企業研究で見るべきポイント
面接前の企業研究では、以下のポイントを重点的に調べました:
公式サイトでの確認事項:
- 制作実績の豊富さと質
- 技術ブログやオウンドメディアの充実度
- 採用ページでの技術スタック・開発環境の説明
SNS・外部メディアでの確認事項:
- 社員の技術発信活動
- 勉強会・カンファレンスでの登壇実績
- 業界メディアでの取材・掲載状況
サイト等での確認事項:
- Note等で発信されている社員のリアルな声
- 労働環境・成長機会に関する声
- 自社の良いと思っている事など
ただし、口コミサイトの情報は参考程度に留めて、最終的な判断は面接での直接確認を重視することが大切です。
特に昇給については、「昇給制度はあるが、実際の昇給額は良くて年収ベースで1万円程度」というケースもあるので、企業の先輩エンジニアの具体的な実績を聞けると良いと思います。
ベストな受託開発企業を探す&自分の市場価値も高める
もし、今の環境で悩んでいて転職をちょっとでも検討していたら、転職エージェントやスカウト型の転職サービスを使って、色んな企業を見てみるのも良いと思います。
転職サービスを使い出したら必ず転職しないといけない訳じゃありません。僕の場合は、転職エージェントに登録してみて、キャリアアドバイザーの今の悩みを打ち明けて、「転職すべきかどうか」から相談に乗ってもらった経験があります。
そこで知らなかった様々な受託開発企業を知れたし、やっぱりまずは行動してみるのがいいなと実感できました。
おすすめのエンジニア特化型の転職エージェント
下記みたいなエンジニア特化型の転職エージェントだと技術的な話が通じやすく、企業の技術スタックや開発体制についても詳しく教えてもらえました。



転職エージェント活用のコツ
- 複数のエージェントを併用する
- 最初は「情報収集」のスタンスで気軽に相談
- 実際の求人や企業の詳細について初回面談で教えてもらう
同時に自分の市場価値も高めていく
技術力を伸ばしたり、ポートフォリオや実績を作ったり、少しでも自分の市場価値を高める動きをしましょう。一時的にしか成長していない人よりも、継続的に努力していることが伝わると、採用担当者の評価も少しでも上げられます。
- 技術ブログを書く :学んだことを発信
- GitHub活動を活発化 :オリジナルプロダクトの制作
- 課題解決できるエンジニア :現職で提案や調査ができる機会があれば積極的にチャレンジ
もし、実務経験2年目、3年目のエンジニアの市場価値が知りたい人は、下記の記事も参考にしてみてください。
まとめ:受託開発で成功するための3つのポイント
この記事の重要なポイントを3つにまとめます:
1. 「受託開発やめとけ」は環境選択の問題
「受託開発だからダメ」ではなく、「どんな環境でどんなポジションで働くか」によります。作業担当者としてしか働けない環境なら確かに厳しいですが、提案型エンジニアとして成長できる環境なら十分に価値があります。
2. AI時代でも価値のあるエンジニアになれる道筋は明確
「仕様設計や実現可能性の調査ができ、クライアントの課題に対してエンジニア視点で提案ができ、ヒアリングやテクニカル部分のリードができる」人材になること。これがAI時代でも生き残れる条件です。
3. 転職のベストタイミング
ポテンシャル採用としても評価される年齢で、実務経験も一定積んでいる今の状況は、実は転職市場では非常に価値があります。同期との差も、環境を変えることで十分挽回可能です。